『グーグル、自動運転の試験結果を公表』で考えるべきこと
グーグルが自動運転車の試験結果を公表しました。
試験結果の概要はAFPの記事に、細かい試験結果のデータは、Gigazineの記事にあります。
安全工学の最大のテーマは、事故防止の最終判断は機械によるのか、
それとも人間によるのかということです(この研究分野は、”人間・機械系”と呼んだりします)。
これは自動車事故だけでなく、鉄道事故や航空事故にも言えます。
いまだ記憶に鮮明なのは、JR西日本の福知山線脱線事故(尼崎脱線事故)でしょう。
この事故は、いわゆる”新型ATS”が設置されていれば防げたというのは、結果論としては正しいのですが、
事故の性質的には、保安システムの盲点に嵌ってしまった、運転士の異常運転で起きた事故でした。
(これについての詳細な議論は、私のオピニオンブログの記事や_書評をご参照ください)
車の自動運転に話を戻すと、安全運転に必要十分な認知能力・判断能力を持っていない人に、
自動運転機能があるからといって、車を運転させて良いのかという議論が必要です。
公共交通が充実していない地域に、自家用車は欠かせないとはいえ、
過失致死事故を起こしてしまっては、取り返しがつきません。
もっとはっきり言うと、認知症の人に自動車の運転をさせて良いのか、ということです。
人間より万能に見える機械といえども、それを設計・生産したのは他ならぬ人間です。
機械も故障します。その確率をゼロにすることは絶対にできません。
最終的な判断は、やはり人間の判断により担保されるのではないでしょうか。
移動の自由という社会システムの問題を、科学技術で解決しようというのは安易だと考えます。
もちろん、科学技術、特にICTがそれを助けることはあるのですが。
【1.19追記】
トヨタが「完全自動運転」を目指す方向に、開発方針を転換したとの記事が出ました。